タイ東部にある物流拠点。午後11時を過ぎると、日中とは明らかに違う空気が漂い始める。フォークリフトの音が減り、代わりに複数のピッキングロボットが低い駆動音を立てながら棚の間を行き来する。人間の作業員は少数精鋭となり、ロボットが苦手とする不定形の荷物や、システムが認識できなかった商品の処理に専念する。
現場責任者によれば、この「夜間協働体制」が本格的に始まったのはこの一年ほどのことだという。以前は日中と同じ人員体制で夜勤を回していたが、採用難から夜勤専属スタッフの確保が年々難しくなり、ロボットへの依存度を高めざるを得なかった。
「棲み分け」のルール作り
興味深いのは、ロボットと人の作業範囲を単純に分けるのではなく、時間帯によって役割を切り替えている点だ。日中は人が主体でロボットが補助に回るが、深夜帯になると主従が逆転し、人はロボットの「例外処理係」に近い立場になる。
ロボットに合わせて人が動くのか、人に合わせてロボットが動くのか。その境界線を時間帯ごとに引き直しているようなものだ。 ― 現場マネージャー
この切り替えを支えているのは、安全柵などの物理的な隔離ではなく、リアルタイムで稼働状況を可視化するダッシュボードだ。人がどの通路にいるかをロボット側が把握し、動線を自動的に調整する仕組みが導入されている。
離職率という副次的な効果
導入企業が当初想定していなかった副次的な効果として、夜勤スタッフの離職率低下が挙げられている。単純な繰り返し作業をロボットが引き受けることで、人が担う仕事の負荷と裁量のバランスが変わったことが要因とみられる。
一方で、ロボットの稼働台数を増やしすぎると、通路の混雑や充電ステーションの奪い合いといった新たな課題も生まれる。「最適な人とロボットの比率」を見極める試行錯誤は、まだ道半ばだ。